Live2D でキャラクターに命を吹き込む魅力的な機能、それが物理演算です。しかし、Live2Dの物理演算のやり方やアニメーションの作り方を学んでも、いざ物理演算のアニメーションベイクを試した時に、動きが反映されない、あるいは揺れの動きが弱いといった問題に直面することがあります。特に、Live2Dのアニメーションベイクができないという壁にぶつかり、作業が止まってしまう方も少なくありません。
また、Live2Dの物理演算を録画する方法や、モーションが自然につながるループアニメーションの作成、さらにはLive2Dアニメーションにおける呼吸の自動設定など、知りたいことは多岐にわたるでしょう。この記事では、Live2Dのアニメーションと物理演算に関するこれらの悩みを一つひとつ解き明かし、具体的な解決策と制作のコツを詳しく解説していきます。
この記事のポイント
- 物理演算がアニメーションに反映されない根本的な原因
- アニメーションベイクができない時の具体的なチェック項目
- 自然な揺れを生み出す物理演算の調整方法
- 呼吸やループなど応用的なアニメーション制作のヒント
Live2Dのアニメーションと物理演算の基本設定
- まずはLive2D物理演算のやり方を覚えよう
- 基本となるLive2Dアニメーションの作り方
- Live2Dアニメーションの呼吸を自動で設定
- 物理演算のアニメーションベイク機能とは
- Live2Dアニメーションベイクができない主な原因
まずはLive2D物理演算のやり方を覚えよう
Live2Dにおける物理演算は、モデルの動きに入力されたパラメータの変化に応じて、髪や服などのパーツが自動で揺れるように設定する機能です。この設定を正しく行うことが、リアルな動きを生み出す第一歩となります。
物理演算の基本的な流れは、「入力」と「出力」の関係を定義することです。例えば、「頭の傾き(入力)」に応じて「髪の毛が揺れる(出力)」といった具合に、どの動きがどのパーツの揺れに影響を与えるかを設定します。
設定の具体的な手順
設定は、モデリングメニューから「物理演算・シーンブレンド設定」を開いて行います。 まず、管理しやすくするために「髪の揺れ」「服の揺れ」といったグループを作成します。次に、そのグループに対して入力設定を行います。「頭の動き」や「体の動き」といったプリセットが用意されており、これらを選択するだけで、基本的な入力パラメータ(角度X、Y、Zなど)が自動で設定されるので便利です。
最後に出力設定です。ここで、物理演算を適用したいパラメータ(例:「髪揺れ」パラメータ)を追加し、揺れの大きさを調整します。この入力と出力の設定が、物理演算の根幹をなすものと考えられます。
なお、物理演算を適用するパーツには、あらかじめ揺れ専用のワープデフォーマやスキニングが設定されている必要がありますので、注意してください。
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基本となるLive2Dアニメーションの作り方
物理演算をアニメーションに反映させるためには、その土台となるアニメーション自体の作り方を理解しておくことが不可欠です。物理演算は、あくまでアニメーションの動きを「入力」として計算されるため、入力がなければ揺れも生まれません。
アニメーションは、Live2D Cubism Editorのアニメーションワークスペースで作成します。ここでは、タイムライン上にキーフレームを打ち込むことで、キャラクターに動きをつけていきます。
タイムラインでのキーフレーム操作
アニメーションワークスペースにモデルを読み込むと、タイムラインにモデルトラックが表示されます。ここに、動かしたいパラメータ(例えば、物理演算の入力として設定した「角度X」や「角度Y」など)を追加します。
そして、タイムライン上の異なる時間にキーフレームを打ち、パラメータの値を変更することで、キャラクターが顔を動かしたり、体を傾けたりする一連の動きを制作します。このキーフレームによって作られた動きが、後の物理演算ベイクの際に計算の元となるのです。
このため、物理演算の揺れを確認したい場合は、まず入力に設定したパラメータを動かす簡単なアニメーションシーンを作成してみることをお勧めします。
Live2Dでアニメーションの呼吸を自動で設定
キャラクターに生命感を与える簡単な方法の一つに、呼吸を自動で設定する機能があります。これは、特別なキーフレームを打つことなく、モデルが自然に呼吸しているような動きを再現できる便利な機能です。
この機能は、「物理演算・シーンブレンド設定」ダイアログ内で有効にできます。プレビューメニューの中にある「呼吸」の項目にチェックを入れるだけで、モデルがゆっくりと上下に動くようになります。
適用の条件と注意点
自動での呼吸が適用されるためには、モデルに特定のパラメータIDが設定されている必要があります。具体的には、「ParamBreath」または「PARAM_BREATH」というIDを持つパラメータがモデルに存在しなければなりません。このパラメータに対して、エディタが自動的に値を適用し、呼吸モーションを生成する仕組みです。
ただし、この機能は主にプレビュー上での動きの確認や、物理演算の揺れ具合をテストするためのものです。この自動呼吸の動きをそのまま動画ファイルとして書き出したい場合は、後述する録画機能を使うか、手動で呼吸用のキーフレームをアニメーションに設定する必要がある点は覚えておきましょう。
物理演算のアニメーションベイク機能とは
物理演算のアニメーションベイクとは、物理演算によってリアルタイムに計算されている揺れの動きを、アニメーションのタイムライン上にキーフレームとして固定(焼き付け)する機能です。
この処理を行うことで、いくつかのメリットが生まれます。まず、手作業では作成が困難な、複雑で自然な揺れのモーションを簡単にアニメーションに追加できます。また、毎回物理演算の計算を行う必要がなくなるため、再生時のアプリケーションの負荷を軽減することにも繋がります。
キーフレームの挿入方式
ベイクを行う際には、キーフレームの挿入方式を選択できます。これには主に二つの方式があり、それぞれに特徴があります。
項目 |
自動的に最適なカーブを作る |
毎フレームにキーを打つ |
再現度 |
物理演算の動きとわずかな誤差が生じる場合がある |
物理演算の動きを完全に再現できる |
キーフレーム数 |
少ない(カーブで動きを表現するため) |
非常に多い(毎フレームにキーが打たれる) |
調整のしやすさ |
ベイク後のキーフレームが少なく、手動での調整がしやすい |
キーが多すぎて、ベイク後の調整は極めて困難 |
どちらを選ぶかは目的によりますが、ベイク後に動きを微調整する可能性を考慮すると、デフォルト設定でもある「自動的に最適なカーブを作る」を選択するのが一般的です。
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Live2Dでアニメーションベイクができない主な原因
多くの初心者がつまずく「物理演算のアニメーションベイクができない」問題。その最も一般的で根本的な原因は、物理演算の「入力」として設定したパラメータが、アニメーション上で動いていないことです。
物理演算は、あくまで入力パラメータ(例:頭の角度X)の変化を検知し、それに応じて出力パラメータ(例:髪揺れ)の値を計算する仕組みです。したがって、アニメーションのタイムライン上で入力パラメータにキーフレームが一切打たれておらず、値が全く変化していない場合、計算すべき揺れが存在しないため、ベイクを実行してもタイムラインには何もキーフレームが生成されないのです。
「カーソル追従ではモデルが揺れるのに、ベイクすると動かない」というケースは、まさにこの典型例です。カーソル追従はマウスの動きを直接的な入力として物理演算をリアルタイムに動かしますが、アニメーションベイクはタイムライン上のキーフレーム情報のみを参照するため、このような違いが生じます。
Live2Dのアニメーションで物理演算が効かない時の解決策
- キーフレームがベイクに反映されない場合
- 物理演算による揺れの動きが弱い時の調整方法
- Live2D物理演算は録画機能で動きを確認
- 自然に見せるためのループ設定のコツ
- ベイク後の不自然な動きをカットする方法
キーフレームがベイクに反映されない場合
前述の通り、物理演算の結果がアニメーションに反映されない場合、まずは入力パラメータにキーフレームが打たれているかを確認することが最も大切です。
解決策は非常にシンプルで、アニメーションワークスペースに戻り、物理演算の入力に設定しているパラメータ(一般的には「角度X」「角度Y」「体の回転X」など)に、意図的に動きをつけるキーフレームを打ちます。例えば、タイムラインの0秒地点と1秒地点にキーを打ち、パラメータの値を少し変更するだけでも構いません。
この状態で再度アニメーションベイクを実行すれば、入力パラメータの動きに応じた物理演算の結果が、出力パラメータのタイムライン上にキーフレームとして焼き付けられるはずです。
また、見落としがちな点として、ベイクを実行する際に正しいモデルトラックを選択しているか、ベイク設定ダイアログで物理演算を適用したいパラメータにきちんとチェックが入っているかも、併せて確認するようにしましょう。
物理演算による揺れの動きが弱い時の調整方法
物理演算をベイクしたものの、髪などの揺れが思ったよりも小さい、あるいは動きが弱いと感じるケースもよくあります。この問題は、「物理演算・シーンブレンド設定」ダイアログで調整することが可能です。
揺れの大きさに直接影響するのは、主に「出力設定」と「物理モデル設定」の二つの項目です。
出力設定での調整
まず確認したいのが、出力設定タブにある「最大出力(%)」の値です。この数値が、物理演算結果をどれくらいの振れ幅でパラメータに反映させるかを決定します。もし揺れが弱いと感じるなら、この値を大きくしてみましょう。プレビュー画面で実際の揺れ具合を確認しながら、適切な数値に調整します。
物理モデル設定での調整
より細かな揺れの質感を調整したい場合は、「物理モデル設定」タブを操作します。 ここには「揺れやすさ」「反応速度」「収束の早さ」といった項目があり、振り子のプレビューを見ながら直感的に設定できます。「揺れやすさ」の数値を上げれば、より小さな入力でも大きく揺れるようになります。これらのパラメータを組み合わせることで、硬い髪や柔らかい布といった、素材感の違いを表現することも可能です。
Live2D物理演算は録画機能で動きを確認
アニメーションのキーフレームを手で打つ代わりに、より直感的に動きを確認し、シーンとして生成する方法があります。それが、「物理演算・シーンブレンド設定」ダイアログに備わっている録画機能です。
この機能を使えば、プレビュー画面上でのマウスドラッグによるカーソル追従の動きや、ランダムポーズによる自動的な動きを、そのままアニメーションデータ(.can3)の新規シーンとして記録できます。
手打ちでは表現が難しい、複雑で滑らかな動きをさせたい場合に、この録画機能は非常に役立ちます。例えば、キャラクターに話しかけるようにカーソルで顔を動かし、その自然なインタラクションを録画すれば、質の高いモーションのベースを手軽に作成することが可能です。録画されたシーンは、後からタイムライン上でさらに細かく編集することもできます。
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自然に見せるためのループ設定のコツ
作成したアニメーションを自然にループさせることは、特にゲームやアプリ用のモーション制作において求められます。しかし、物理演算をベイクしたアニメーションを単純にループ再生すると、最後のフレームと最初のフレームの揺れがつながらず、動きがカクついて見えることがあります。
これは、物理演算のベイクがトラックの範囲を2周分計算した結果を焼き付けるという仕様に起因します。このため、アニメーションの開始部分が、前のループの最後の揺れの余波を受けてしまうことがあるのです。
この問題を回避するための効果的なテクニックは、ベイクを行う前に、アニメーションの最後にキーフレームの無い「余白」の区間を意図的に長く設けておくことです。例えば、3秒のループアニメーションを作りたい場合、タイムラインを5秒程度まで伸ばしておき、最後のキーフレームは3秒地点に打ちます。この状態でベイクを実行し、焼き付けが終わった後に4秒以降の不要な部分をカットすることで、ループのつなぎ目が自然になります。
ベイク後の不自然な動きをカットする方法
前述のループ設定のコツで解説した通り、アニメーションベイクの仕様を考慮して、ベイク後にタイムライン上の不要な部分をカットする作業は、自然な動きを実現する上で有効な手段です。
具体的な方法としては、ループのつなぎ目を滑らかにするために設けた余白部分や、意図しない揺れが発生している部分のキーフレームを、タイムライン上で選択して削除します。
特に「自動的に最適なカーブを作る」方式でベイクした場合、キーフレームの数が比較的少ないため、このような手動での調整作業が行いやすいという利点があります。ベイクされたキーフレームを選択し、カーブを編集することで、揺れのタイミングを微調整したり、特定の揺れを抑制したりすることも可能です。
物理演算はあくまで自動計算の結果であるため、完璧ではありません。最終的なクオリティを高めるためには、ベイク後に人の手で一手間加えるという意識を持つことが、作品の完成度を左右すると考えられます。
Live2Dでアニメーションの物理演算を使いこなすための総括
- 物理演算は入力パラメータの動きに応じて出力パラメータが揺れる仕組み
- 物理演算をアニメーションに適用するにはアニメーションベイク機能を使う
- ベイクできない最大の原因は入力パラメータにキーフレームがないこと
- カーソル追従で揺れてもアニメーションにキーがなければベイクされない
- まずは入力用のパラメータ(角度Xなど)を動かすキーを打つ
- 揺れの動きが弱い場合は出力設定の「最大出力」を上げる
- 揺れの質感は物理モデル設定の「揺れやすさ」や「長さ」で調整する
- 振り子プレビューを見ながら揺れ具合を直感的に設定できる
- ベイクの方式は「自動カーブ」と「毎フレーム」の2種類
- ベイク後の調整を考えるなら「自動カーブ」方式がおすすめ
- ループアニメーションは末尾に余白を設けてからベイクする
- ベイク後に余分なキーフレームをカットすると繋ぎ目が自然になる
- 呼吸モーションは「ParamBreath」というIDで自動適用できる
- 録画機能を使えばカーソルの動きをアニメーションシーンとして保存可能
- 物理演算の設定やベイクはトライアンドエラーで理想の動きを探求することが大切